株式会社伍魚福 代表取締役社長

読書メモ2008.12.14(Sun)「よき経営者の姿」伊丹敬之著

前一橋大学大学院商学研究科教授で、現在は東京理科大学専門職大学院教授の伊丹敬之(いたみひろゆき)さんの著書です。
兵庫県立大学の當間克雄教授に紹介いただいて読んだ「経営戦略の論理」で初めて伊丹教授を知りました。この「経営戦略の論理」は私の経営方針の立案においてのバイブルとなっています。

新聞の新刊紹介に伊丹教授の名前を見つけ、ネット通販で検索してこの本を見つけました(この本は新刊ではなく2007年1月に出版されたものです)。

経営者をさまざまな側面から分析し、「よき経営者」の姿を書いておられますが、読み物としても大変面白いです。

第1章「顔つき」
1.深い素朴さ
→「素直に、しかし深く考える」
2.柔らかい強さ
→「強さを背後に秘め、しかし柔らかさで人を魅了する」
3.大きな透明感
→「何かをなした後の結果について、自分ですべて引き取るという思い(覚悟)」と「公の心」
の3つをあげておられます。

いい顔つきを育む決断のプロセス-「哲学」や「公の心」に基づくいい意味での「鈍感さ」
→組織の人々の人間心理の機微に、社会の受け止め方に、繊細に意を配ることが必要だが、気配りが過ぎれば動けない。だからいい意味での鈍感さが最後には必要となる。

第2章「仕事」
経営者の3つの役割
→リーダー、代表者、設計者
「経営とは、他人を通して事をなすこと」

第3章「資質」
経営者たる3つの資質
→エネルギー、決断力、情と理

経営者に向かない人
1.私心が強い
2.人の心の襞がわからない
3.情緒的にものを考える
4.責任を回避する
5.細かいことに出しゃばる

→経営者は「偉大なる常識人」でよい

第4章「育ち方」
1.高い志
→単に私利私欲を追うのではない公の心をもつ
2.仕事の場の大きさ
→若いころに経験する仕事の場の大きさ
3.思索の場の深さ
→「深い思索」の結果、「自分なりの考えをもっている」

第5章「失敗」
失敗の背後にあるもの
1.状況認識の誤り
2.人物鑑定の誤り
3.人格的ゆるみの誤り

第6章「退き際」
晩節を汚さないために
→早目の世代交代

この本の中には、法隆寺・薬師寺の宮大工の棟梁、西岡常一さんの言葉がたくさん引用されています。
「百論をひとつに止めるの器量なきものは慎み惧れて匠長の座を去れ」これは宮大工に代々伝わる口伝だそうです。いつの時代も経営者の根本は同じだと言えるでしょう。

反省とともに気づきの多い本でした。
座右の書のひとつに加えたいと思います。